2017年 03月 06日
投資銀行での勉強量 |
投資銀行部門の話を聞く場合、業務量などの話が多いように思いますが、勉強量についてはあまり触れられていないのではないかと思います。実際のところ、慣れてくると当たり前のように感じることが多いのですが、ファイナンスだけで辞書のような本を軽く10冊くらい読みます。正直、OJTの経験が最も重要だと思いますが、それでも勉強無しに業務のファンダメンタルな理解ができないように思います。あくまでも私の短い経験ではありますが、優秀なバンカーは大体勉強家です(理系院出身又は国家一種(総合職)などの資格を持つ方が比較的多かったように思うので、全体的にきっちりやってくる印象があります)。
経験だけでなく、理論ベースでストラクチャー立てて勉強を行い、実戦で試して、確認した後、また勉強するというサイクルが出来上がっているように思います。そのため、上の方でディールを多数経験し、適切な本を読んでいる方は自然と知識・経験が積み上がっているように思います。「アナリストは手を動かすのが仕事だ」と主張する方もいらっしゃるかもしれませんが、アナリストの時期こそ、業務で行なっていることを自分なりに勉強し、理解して行くプロセスが必要なのではないかと感じる次第です。
確かに、ピッチであれば勉強の必要はほとんどないのかもしれません。市場調査をする場合、会社HPをくまなく見たり、IR読んで、情報ツール使えば基本的に必要な情報は得られますし、会社概要は作れます。CompsやDCFなどのモデルを作る場合は最初は大変ですが(想像以上にかなり間違えます)、慣れてくれば基本的には機械的(作業的)にできてしまうことが多いかもしれません。上司から突っ込まれそうな部分は大体決まっているので、それを把握して、説明を準備しておけば大丈夫です。つまり、極論で言えば、本が必要な部分というのはあまりないように思います。IBDで大事なことは「クライアントが求めている本当に素晴らしい資料を作ること」ではなく、「上司が欲している資料」を作ることが全てです。そのため、上司の性格や好みを一早く察して、それに対応することが本当の意味での仕事です。というと、無味乾燥な感じもしなくもないですが、現実問題そうかもしれません。同時に使える上司かそうでないかの見極めもキャリア上重要なことは結構あります。逆も然りですが。
とは言え、上に上がり、クライアントの矢面に立って行くこととなると、数字そのものの意味についても一つ一つ説明できるようにする必要があるように思います(とはいえ、基本的には上司が突っ込む数字とクライアントの数字は同様なように思いますが)。ただただ、作業的に業務をこなして行くだけでは、市場調査の過程で新情報を得られるかもしれませんが、そうした情報だけではクライアントの信頼を得るのは難しいと感じる次第です。従って、本を読んで勉強して、数字一つ一つの意味を細かく理解して、答えられるようにしておく必要があるのかもしれません。一応、IBDでよく言われるのは、「ファイナンスの専門家であると同時に、数字の専門家」であるという点です。従って、数字での間違い、理解不足は許されないように思います(と言いつつも、ヒューマンエラーは確実に起こりますので、逐一上司からのチェックを受けることになるように思います)。というのも、優秀なバンカーが流出している昨今、クライアントの方が賢いというのは普通にありうることですし、そもそもクライアントの方がビジネスを知っているため、数字が間違っていれば、そのミーティングでは「時間の無駄」と言っているに等しいように思います。例えば、営業の方がいて、そもそも間違ったことを言っていれば、「お前何しに来たの?」とクライアント側は言いたくなります。また、データを持って来て、そのデータについて答えられなければ、「この時間意味ある?」と問いたくなってしまうかもしれません。そのような状況であるように思います。クライアント(社内外)に鍛えられる職業であるというのは間違いないように思います。非常に難しいことではありますが、「ビジネスをする際には基本的に全てを完璧に」ということなのかもしれません。
さて、そんなこともあり、理論を頭に叩き込み、経験を蓄積することによって、頭の中に知識を染み込ませて、論理的に理解したことを説明できるようにするのが必要である世界であると感じました。また、きちんと説明できる人間からクライアントに出されるようにも思います(もちろん仕事ができるのは前提です)。アソシエイトやVPなどの「中間」が不足しているように感じる昨今ですが、社内クライアントの靴を舐めるような泥仕事をしていけば、何とか生き残っていけると感じる次第です。私は既に関係はありませんが、ある意味教育はしっかりしているように思いますので、投資銀行で鍛えて、次の進路に備えるのが重要なのかと思う次第です。私は主体性のある方であれば、投資銀行は非常に良い「教育機関」であると感じています。新卒をこれだけ死ぬほどビシバシ鍛えてくれるところもありませんので。最近はアナリストを早く帰らせようという動きもあるので、以前の投資銀行の印象とは異なると言われていますが、業務のクオリティは高くなければなりません(嫌でも夕方ぐらいに「明日朝までに”完璧に”頼むよ」なんて言ってぶっこまれることもありますが笑)。身体的にも精神的にも死なないように気をつければ、良いところだと思いますので、外銀IBDに新卒で最初に入っておくことをお勧めします。そうすれば後が楽です。
要求に応じて、勉強していく必要もありますし、それはファイナンスだけでなく、経営、法律、政治、経済など多岐に渡ります。また、要求される前に自分自身で自発的に完璧にしておくことも同時に大事であるように思います。専門書は何がいいか、自分ができると思う年次の近い上司に早く聞くのが大事です。そうすれば必然的にきちんとした書物を教えて頂けますし、どう言ったタイミングで読めばいいとか、そういうところもきちんとわかっている場合も多々あるように思います。ただ、書物を読めば良いだけではなく、実戦に活かされないようなマニアックなことばかりやっても仕方がないので、それの塩梅は個人個人で考えるのがいいように思います。やはり仕事ができることが最優先ですので。
by lse_keio_sfc
| 2017-03-06 18:46
| 勉強法
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