2017年 02月 24日
PEとVCの違い |
PEまたはVCとよく言われがちなこの業界ですが、実際のところ、似ているようで結構違います。というより、全然違います。一応、どちらもバイサイドではありますし、ハンズオフもあれば、ハンズオンもあります。ステージが違うとはいえ、一応、果たしている役割はファイナンサーということを考えると、似ていると言えるかもしれません。しかしながら、内情を踏まえると、必ずしも似ているとは言えないように思います。
最初に簡単に違いについて説明してみましょう。VCは多くの方が分かっているように、シード・ステージからレイト・ステージと呼ばれる時期に投資します。シード期は最初に企業が生まれる前後あたりで出資し、企業が成長するのを助長します。この時期の投資基準はよくありがちなNPVやIRRといったファイナンスを使ったり、DCFを使ったりするなどといったことは全くなく、投資家独自の定性的な基準で投資します。例えば、「出資者がワクワクするようなサービス」という基準であれば、出資者がワクワクしさえすれば投資します。冗談に思うかもしれませんが、シードステージからレイトステージにかけては、会社の都合により、事業変更なども頻繁に行われたりもするため、キャッシュフローの予測を立てることは難しいです。というのも、別のサービスや事業になってしまえば、そもそも全く違うキャッシュフロー予測が必要になってしまうためです。
レイトステージになれば、ある程度安定してくるため、NPVやIRRといった指標を使うことがあるかもしれませんし、ある程度の規模感なので、話ができる経営陣もいるかもしれません。そのような場合、ある程度合理化されたファイナンスを使用した投資基準を採用するかもしれません。正直なところを言えば、ある程度の経歴があって、ベンチャーキャピタルにどうしても行きたいというのであれば、このステージに特化したベンチャーキャピタルの方が、やりやすいかもしれません。シードステージでは、そもそもファイナンスの概念がなかったりするので。
一方で、PEになると、再発展期、衰退期に投資することがあります。いわゆる、バイアウト投資と企業再生投資です。バイアウトの場合は株式出資によって、経営権を握り、経営陣を送り込むことによって、企業を成長させます。企業再生の場合もある程度似ていますが、企業再生の場合は比較的ロジカルに処理されるような案件があるように思います。バイアウト投資に必要なのは、主に収益性の高い事業を伸ばしていくことにより、高売上・高収益を達成していくように見える一方で、企業再生は費用面(固定費)を主に切ることにより、高EBITを達成していくように見えます。当然ですが、売上を上げて、費用も同時に下げるということは非常に重要なのですが、両方行うのは比較的難しいように思います。逆に両方行うことによって、失敗してしまう面も無きにしも非ずと言えるかもしれません。
例えば、スシローのケースがそれに当てはまると言えるかもしれません。スシローはユニゾンに出資を受け、CEOとハンズオンで入った加藤氏のコンビがうまく相乗効果を生んでいたように思います。寿司職人出身の社長と、ドイチェ、マッキンゼー出身のファンドの人間らしく(後にスシローの人間になりましたが)、合理的な側面をうまくドライブして、スシローをうまく成長して行かせられていたと言えるように思います。一方で、ペルミラがファイナンサーになった後から、スシローは大きく変わってしまいました。スシローは元来原価の高い商品を敢えて出していました。「うまい寿司を腹一杯」という言葉がありますが、これは、その理念を言葉にしたものでしょう。当時のスシローは赤字覚悟でマグロの赤身を出したりと、職人出身の社長ならではのこだわりがありましたし、それをユニゾンが許していたように思います。
一方で、ペルミラになって以降は、更なるグロースのため、無理な経営改革を行ってしまったのかもしれません(あくまでも予測です)。おそらく、ペルミラになって以降、店舗数が100店舗伸びており、店舗あたり売上が約3億円のため、単純計算で300億円のグロースを達成しています(5年前比20%の増加)。これは売上を伸ばすことによって、スケールメリットを活かしていこうという考えだったのかもしれません。また、そうしたスケールだけでなく、店舗での効率化を測ろうとしていたように思います。例えば、元々スシローは”サビあり”と”サビ抜き”で皿の色が異なっていましたが、どちらもさび抜きにし、別にワサビをベルトコンベアーに流すことにより、原価を下げているようにも感じました。エビ天のエビはネタと別のエビを使用していましたが、一時期ネタのエビを再利用したかのようなエビ天になっていたこともあります。また、サイドメニューの拡大、180円寿司などの単価の高い製品のプロモーションの増加など、1店舗あたりの売上と利益を伸ばそうとしているようにも見えました。しかしながら、本来のスシローの強みであるネタの品質の高さは失われ、客足が見るからに遠のいているようにも見えました。地方に行くと、あれほど並んでいたスシローが、店舗にもよりますが、明らかに減っているところも散見されました。客単価を上げたとしても、客足が遠のいてしまっては、効果がないと言えるかもしれません(同時に費用を削れているのであれば問題はないのかもしれませんが)。また、結果として、リピーターが減少してしまうことになれば、ブランドスイッチが起こり、他社製品に行ってしまうかもしれません(ただ、面白いのが、他社と比べると比較的品質が良いというレベルに保たれており、容易に客がスイッチできない状態であったようにも思います)。印象としては店舗の体力が削られているように見えます。
※これはあくまでも私見ですので、ご了承ください。
さて、閑話休題で、だいたい上記のようなスタイルの違いがVCとPEの違いであり、VCでもシードとレイト、PEではバイアウト投資と企業再生投資などと分かれていることを説明しました。だいたいこのようなものかなと思っているわけですが、違った場合は改善したいと思います。
by lse_keio_sfc
| 2017-02-24 01:17
| 仕事
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