2015年 08月 23日
LSE修士卒業後の進路(一般編) |
LSE修士卒業の進路について考えてみたい。日本人の場合、LSEは5~10人ほどの新卒で大学を卒業した人が来る、割と規模の大き目の大学ではないかなと考えている。修士で留学するdestinationとしては最大規模?かもしれない。もちろん、アカデミックな視点から実践的なカリキュラムを提供することから、職業経験がある人も来るし、修士卒業後に博士で留学してくる人もいるのだが、今回は修士というところにスポットを当てたい。
LSEに来ている人のバックグラウンドに関しては何度も触れているので、ほぼ省略したい。ただ、日本人にしても、外国人にしても、LSEの学部を卒業した人がLSEに来ることはほとんどないし、僕に関する限りでは、みたことがない。LSEの学部と修士は本当に別物と考えて、来るほうがいいかもしれない。学部生は基本的にみんな投資銀行を目指すのではないかと思う。イギリスでのインベストメントバンクはかなり洗練されているし、扱いとしては日本の総合商社的なポジションにある(現地人から見た難易度、VISAの問題は除く)。日本だと、就活生の間では、こちらでは割とポピュラーなPEやHFというのはあまり知られていないし、マーチとか地方の大学(京大を除く)に至っては、基本的に投資銀行やコンサルといった職業が全く知られていないように思う。一方で、日本での商社の扱いは絶大である上、憧れの職業として考えられているように思う。そうした状況がロンドンのインベストメントバンクなのではないかと考えている。
修士に関しては、割とバラバラなイメージではあるものの、日本人の就職先は投資銀行コンサル国際機関となっているのではないかと思う。LSEはこれらの会社・機関のターゲット校であるということと、歴史的にも人材の供給源となってきているため、そこに集中しているような印象だ。加えて、とにかく人材が少ない。MAXで10人が新卒で来たとしても、実際に就職市場に流れてくる人間はほぼいないに等しくなる。それはそれぞれのキャリア志向が完全に分離してしまうからだ。国際機関に何人か行くとすると、それだけでただでさえ少ない人材が減ってしまう。さて、以下では一般企業への就職について書いてみたい。
まず、現地就職からだが、現地就職だと、2年のプログラムでなければかなり厳しい状況に置かれるのは間違いない。一年のプログラムだと、参加できる就職イベントが限られる上、その中には現地企業の名前はほとんどない。基本的に一年のマスターの場合はそうした機会がほぼ限られると考えた方がいい。また、近年ではVISAの要件も厳しくなっている。日本人の場合、YMSなどで滞在期間を伸ばせばよい気もするし、滞在期間を延ばすことによって、卒業後の進路の模索が可能になるような気もする。ただ、腰を据えて勉強し、現地就職活動に臨みたいということが希望であれば、2年のプログラムを選ぶとよいように思う。
次に日本と英国以外の就職活動だが、割と香港とシンガポールに集中しているように思う。投資銀行とコンサルはもちろん就職先の一つとしてあるのだが、メーカーなどもある。イギリスでも、こうしたアジアでの就職をしたい人向けに就職案内がたくさん来たりする。ケンブリッジとLSEはどの企業・就職イベントでも招待されるが、オックスフォードとインペリアルは企業や就職イベントによっては名前がなかったりするので、進路画策の際はそうしたことも考慮した方がいいかもしれない。さて、そうした国々への就職だが、日本人には一定のアドバンテージがある。それは、日本語が要件になっていたりすることだ。基本的にこうした国々では英語が基盤となっているのだが、日本語を要件とする会社が結構ある。そのため、比較的有利になりやすいことがある。加えて、コースワーク終了後にフェアが開催されることもあるため、現地と比較すると、就職しやすいのではないか。
日本で就職することを考えると、日本語が完璧な人間が求められる。時々日本語が苦手だとか言っている人がいるが、日本の就職市場だとかなり厳しい。数学ができてトレーダーを目指すとか、英語のネイティヴなので、バックオフィスにいくとか、そういったものだと問題ないかもしれない。しかし、一般的には日本では日本人の顔をしていて、日本の名前で、日本語が完璧に話せる人かつ、日本の大学を卒業している人が好まれる気がする。それを前提として、企業は英語がビジネスレベルで、高学歴かつ、実績云々といった感じのことが多いように思う。そうでなければ、ビジネスを進めることは日本では厳しい。こう見ると、かなり日本人は保守的に映るのだが、どこの国でも保守性はあるし、反発する人は多くいる。ただ、移民を受け入れる体制がその国々にあるかないかだけの話ではないかと思う。
という前提はあるが、日本人留学生の需要は企業のグローバルへの意気込みと共に年々増している。日本で言われるような修士は就職活動に不利とかそういうのは一切なく、かつ、逆に評価される面でもある。実際に日本人でTOEFL 100はおろか、TOEIC 900すら取れない人が大半だと思うし、それでいて、学位留学で起きる様々な困難を経験している人も少ないように思う。就職市場ではこうしたものは糧になる。また、学位留学は交換留学とは似て非になるものであるし、得られるものも確実に違うように思うので、ぜひ学位留学をお勧めしたい。とはいえ、僕は日本の大学生活の方が好きだけど。本当に楽しい思い出しか残っていないので。
若干話は逸れたものの、結論から言えば、左から英国→アジア→日本の順で就職が厳しい。現地就職を目指すのであれば、2年プログラムに応募することをお勧めするし、その他であれば、1年プログラムでも構わない。そんなところか。
by lse_keio_sfc
| 2015-08-23 17:19
| 修士
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Comments(5)
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セリーヌ
at 2017-03-12 08:34
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ブログ拝見しました。外資系に内定とございますが、イギリス永住権無しで、イギリス勤務のお仕事を得られたと言うことですか?それとも帰国されるのですか?私は現在オックスフォードの一年生です。
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セリーヌ
at 2017-03-12 08:34
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ブログ拝見しました。外資系に内定とございますが、イギリス永住権無しで、イギリス勤務のお仕事を得られたと言うことですか?それとも帰国されるのですか?私は現在オックスフォードの一年生です。
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lse_keio_sfc at 2017-03-12 12:03
> セリーヌさん
外資系とは外銀のことでしょうか?それは以前いました。イギリスではありません。
1年生というのは学部生ですかね?それであればこれから色々経験できると思いますので、ぜひ取り組まれてください。就活なんかより、自分の趣味などに打ち込まれた方が人生は豊かになると思いますよ。私も学部・修士の時は全く仕事に関係のないことを勉強していましたので。
外資系とは外銀のことでしょうか?それは以前いました。イギリスではありません。
1年生というのは学部生ですかね?それであればこれから色々経験できると思いますので、ぜひ取り組まれてください。就活なんかより、自分の趣味などに打ち込まれた方が人生は豊かになると思いますよ。私も学部・修士の時は全く仕事に関係のないことを勉強していましたので。
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セリーヌ
at 2017-03-13 00:32
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はいそうです。若僧で貴殿のように経験のおありの方の就活についての記事は私には大変難しいですが。私は貴殿とは違いずっと海外子女なので日本企業は文化的に合わないと思ったりしています。その上私のようにいわゆる正規学部(まあ海外トップ大生)生徒の日本人就活についての情報は曖昧なもので参考にさせて頂きます。経験無し、アメリカやイギリス就労ビザ無し日本人でも、(まあ成績やインターンは頑張るとして)勿論不利でしょうが、頑張ればいわゆるグローバル企業で東京だけに限らず、海外でも働く事が出来るのでしょうか?ボスキャリなど聞いてはいますが、どういう仕組みなのかもわかりません。実はイギリス永住権も近い将来申請できる権利はあるのですが、総合的に考えてあまり意味がなさそうです。なんといっても家族全員のパスポートを期限未定で取り上げる事になるのが大きな理由です。出来れば情報頂けるとありがたいです
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lse_keio_sfc at 2017-03-13 01:17
> セリーヌさん
おそらく学生でご経験のない方がこのブログを読むのは大変難しいと思いますので、お気になさらず(とは言え、まだまだメッキレベルですが)。日本企業は私でも合わないのでそれはお気になさらず。また、外資系企業は日本であってもセリーヌさんと同様のバックグラウンドの方が比較的多いので、それもあまり問題になりません。日本語はやっておいた方が良いとは思いますが。他には香港やシンガポールなども働ける見込みがありますので(アメリカやロンドンはインターンからか日本関連の業務が現実的です)、専門によっては大丈夫だと思います。ただ、日本以外は少なくともインターンの経験か経済学や金融学などのバックグラウンドは欲しいところですね。
大変な状況にあると思いますが、努力次第で基本的には何とかなることが多いです。頑張って下さい。過去記事に就活関連のことが書いてあるので、読んで見て下さい。また、何かありましたら、コメント頂ければ幸いです。
おそらく学生でご経験のない方がこのブログを読むのは大変難しいと思いますので、お気になさらず(とは言え、まだまだメッキレベルですが)。日本企業は私でも合わないのでそれはお気になさらず。また、外資系企業は日本であってもセリーヌさんと同様のバックグラウンドの方が比較的多いので、それもあまり問題になりません。日本語はやっておいた方が良いとは思いますが。他には香港やシンガポールなども働ける見込みがありますので(アメリカやロンドンはインターンからか日本関連の業務が現実的です)、専門によっては大丈夫だと思います。ただ、日本以外は少なくともインターンの経験か経済学や金融学などのバックグラウンドは欲しいところですね。
大変な状況にあると思いますが、努力次第で基本的には何とかなることが多いです。頑張って下さい。過去記事に就活関連のことが書いてあるので、読んで見て下さい。また、何かありましたら、コメント頂ければ幸いです。